◆遺言書作成の目的◆

遺言書を作成する一番の目的は、将来遺された家族が相続手続きが出来ずに困ることを防ぐことです。法的に有効で、遺された家に配慮された内容で、さらに預貯金や有価証券、不動産などの相続財産すべてが正確に網羅されている遺言書があれば、その遺言書を使って相続人は預貯金や不動産の相続手続きが可能です。

また法的に効力がないものの、付言事項として家族へのメッセージや臓器提供、献体などについて希望を書き、自身の思いを伝えることも可能です。

◆遺言書の主な種類◆

遺言書にはいくつか種類があり、よく使われるのは自分で書く自筆証書遺言と、公証人が関与して作成する公正証書遺言の2つです。このほかにも遺言書の内容を公証人にも秘密にすることができる秘密証書遺言や、死に瀕した人などができる特別方式の遺言があります。

当事務所では自筆証書遺言公正証書遺言の作成をサポートしています。

◆自筆証書遺言◆

自筆証書遺言は紙と筆記用具があれば一人で作成できます。証人も不要ですし費用もかかりません。自筆証書遺言の最大のデメリットは、自己流で書いてしまって法律上の要件を満たさず無効となってしまうことで、そういった事例は多々あります。また遺言書を紛失したり、遺言書を発見した人が内容を改ざんするなどのリスクもあります。

自筆証書遺言作成後は遺言者自身で保管したり、相続人の一人に渡しておいたりすることもできますが、自筆証書遺言保管制度という制度があり法務局で保管してもらうことも可能です。

自筆証書遺言を作成し法務局での保管制度を利用しない場合は、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要になります。

当事務所では自筆証書遺言作成をご希望の方に、無効とならないように注意すべき点をアドバイスし、遺言記載内容が将来実現されるよう法務局での保管制度をご利用いただく場合のサポートを行うなど、ご相談者に寄り添った対応を心がけています。

◆自筆証書遺言作成のポイント◆

自筆証書遺言の作り方は民法第968条第1項により、次のように定められています。

【自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない】

すなわち…

相続財産目録以外は、全文を本人が手書きしなければなりません。財産目録はワープロやパソコンで作成してもかまいません。ただしその場合は目録の全ページに遺言者の署名・捺印が必要です。

日付を正確に手書きしなければなりません。和暦でも西暦でも構いませんが、和暦で書く場合は『令和』という元号も必ず記載しましょう。さらに「令和7年3月吉日」という記載では日付が特定できませんので遺言書は無効となります。

印を押さなければならない、ということですので印鑑を押すことを忘れてはなりません。印鑑は実印でも、認印でもどちらでも構いません。

◆自筆証書遺言作成後の注意点◆

せっかく遺言書を作成しても、遺言書通りに執行されなければ遺言者の思いが実現したとは言えません。大切なことは作成した遺言書を大切に保管し、遺言者がお亡くなりになった後(すなわち相続開始後)に遺された方々が適切に運用することです。

自筆証書遺言は財産を相続させる人に渡しておいたり、遺言者が亡くなった後に発見されやすい場所に保管しておきましょう。火災で焼失してしまう等のリスクを少しでも軽減するためビスケットの空き缶に入れておられるかたもいらっしゃいます。

【遺言書の検認】自筆証書遺言を作成し法務局に預けていない場合は、相続開始後、検認の手続きが必要になります。検認とは遺言書の存在や内容を相続人に知らせ、家庭裁判所で遺言書の状態を記録し、それ以降の偽造や改ざんを防止する手続きです。なお検認は遺言書の有効・無効を判断する手続きではないので、検認したとしてもその遺言書が実際の相続手続きに使用できるとは限りません。

 遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、相続開始後 家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、戸籍謄本などの必要書類とともに検認申立書を提出します。戸籍謄本は基本的には遺言者の出生から死亡までの一連の戸籍謄本と相続人全員のものが必要になります。検認の申し立てがあると、家庭裁判所は相続人全員に検認日を通知しますが、申立人以外の相続人が出席するかどうかは各人の自由です。

 申立人が検認日に遺言書の原本を持っていくと、家庭裁判所で遺言書の状態が記録されます。検認後、検認済証明書を遺言書につけてもらえますので、遺言書が法的に有効な内容であればそのまま預貯金や不動産の相続手続きに使うことができます。

 遺言書が封筒に入って封印されていた場合は、勝手に開封してしまうと5万円以下の過料という罰則があります。封印のある遺言書は家庭裁判所の検認の場で開封しましょう。

 このページの上部にも記載していますが、自筆証書遺言を作成した場合は検認不要の「自筆証書遺言保管制度」の利用がおススメです。

◆公正証書遺言◆

公正証書遺言は公証人が関与して作成する遺言書です。実際に作成する際は事前に遺言書の文案を公証人と打ち合わせしたり、戸籍を集め提出します。証人2名も必要です。

公正証書遺言は自筆証書遺言とは違い、遺言者本人が一言一句書いていくわけではありません。遺言者がどのような遺言にしたいのかを公証人に説明し、公証人が原稿を作成します。そして公証人が作成した遺言書の原稿を遺言者と証人に読み聞かせ、正確なことを確認したら遺言者と証人が署名・押印をします。

作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配はまず無いと言っていいでしょう。

公正証書遺言は自筆証書遺言と比べて準備が費用が必要になってきますが、確実性を重視するなら絶対におすすめの形式です。遺言書作成者のご負担を少しでも軽減し安心して作成できるよう全力でサポートします。

◆公正証書遺言の公証人手数料の基準◆

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下43,000円に超過額5,000万円までごとに
1,3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下95,000円に超過額5,000万円までごとに
11,000円を加算した額
10億円を超える場合249,000円に超過額5,000万円までごとに
8,000円を加算した額

1)例えば、「●●市●●3丁目8番地の自宅の土地・建物(=不動産)を子Aに相続させる」という内容の遺言書があるとします。その不動産の評価額が1,400万円だとすると、1,400万円が目的の価額になります。この場合の公証人手数料は23,000円になります。

2)財産の相続または遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基準表にあてはめ、その価額に対応する手数料額を求めこれらの手数料額を合算して公正証書遺言書全体の手数料を算出します。

3)ですので「不動産(評価額1,400万円)は子Aに相続させる」「X銀行の普通預金800万円は子Bに相続させる」という内容の遺言書である場合、不動産に係る部分の手数料が23,000円、銀行預金に係る部分の手数料が17,000円 となり、合算して40,000円が手数料となります。

4)さらに全体の財産の額が1億円以下であれば遺言加算として11,000円がが加算されます。ですので子Aに不動産(1,400万円)、子Bに預金800万円という内容であれば合計51,000円が公証人手数料となります。 

5)さらに公正証書遺言は通常 原本、正本および謄本を各1部作成し、原本は法律に基づき公証役場で保管し、正本、謄本は遺言者に交付されるのでその手数料が必要になります。すなわち原本についてはその枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。また正本及び謄本の交付については、枚数1枚につき250円の手数料が必要になります。

6)公正証書遺言の作成が嘱託人の病床で行われたときは、上記の表によって算出された手数料額に50%加算されることがあるほか、遺言者が病気又は高齢等の理由により体力が弱り、公証役場に赴くことが出来ず、公証人が病院・ご自宅・介護施設等に赴いて公正証書遺言を作成する場合は公証人の日当と現地までの交通費がかかります。