Q)遺言書を作成できない条件というのはありますか?
A)15歳以上のひとは遺言書を作成することができます。ただし、遺言を作成する人には遺言能力が必要とされます。遺言能力とは、遺言の内容とその結果を理解できる能力です。認知症等で判断能力が低下し、遺言の内容等を理解できなくなると有効な遺言をすることができません。仮に遺言書を作れたとしても、後に有効・無効をめぐる相続人同士の争いが生じる懸念があります。
Q)代襲相続人とは何ですか?
A)代襲とは、本来相続人になる人に代わり、その子が代わりに相続分を受け取ることをいいます。具体的には「子の代襲者」と「兄弟姉妹の代襲者」があります。子の代襲者、とは相続人となるべき子の子で、被相続人から見て孫が該当します。被相続人Aに子Bがいたが、BがAよりも先にまたはAと同時に死亡するか、Bが相続欠格に該当したりBがAから廃除を受けているときは、Bの子であるCがBを代襲して相続人になります。兄弟姉妹の代襲者、とは相続人となるべき兄弟姉妹の子で、被相続人から見て甥・姪にあたります。被相続人Aに弟Bがいたが、BがAよりも先にまたはAと同時に死亡するか、Bが相続欠格に該当しているときは、Bの子であるCがBを代襲して相続人になります。
なお、子の代襲者は再代襲も求められます。上記の例でいえば子Bも孫Cも死亡していた場合はCの子Dが被相続人Aの相続人となります。これに対し兄弟姉妹の代襲者は再代襲せず、一代限りとなります。(甥・姪から下の世代にいかない。)
Q)私は父の相続が発生した場合、相続放棄を考えています。その場合、私の子に迷惑が及びますか?
A)相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったことになります。ですのでその場合、相続放棄をした者の子が代襲相続人となることはありませんので、お子様が思わぬ負債を相続してしまうというような懸念は必要ないかと思います。
Q)知り合いが「動画を撮影し遺言を作成しておきたい」と言っています。動画やテープレコーダーで遺した遺言というのは有効なのでしょうか?
遺言は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言等のいずれであっても書面であることが必要です。遺言は要式行為とされ、法定された方式に従わなければ効力を生じません。近年は動画撮影が一般的になりましたので自身の意思表示を動画でしておきたいというご相談もありますが、それでは法的拘束力は生じないということにご注意ください。
Q)特別受益者とは何ですか?
共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者のことを指します。特別受益者がある場合は、他の相続人との公平性を保つために遺産分割の計算の仕方に若干の調整が入ります。被相続人が相続開始の時において有していた財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし(持戻し)、法定相続分または遺言で指定された相続割合によって算出した相続分の中から、その遺贈または贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とします。(民法903条1項)
例えば被相続人Aに子BとCがいる場合に、Aが遺した相続財産は1,000万円ですが、生前AがBに生計の資本として200万円を贈与していたときはAの相続財産は当該贈与を加算した1,200万円とみなされ、Aが遺言で別段の定めをしない限りBとCは法定相続分に従いこれを2分の1ずつ相続することになります。そうなるとそれぞれの相続分は600万円となりますが、相続財産は1,000万円しかないためBは生前贈与受けた200万円を控除した400万円、Cは600万円、というのが実際の相続分ということになります。
Q)一度作成した遺言書を変更することはできますか?
遺言者はいつでも、遺言の方式に従って遺言の全部又は一部を撤回することができます。遺言の方式に従って、ということですので例えばビデオレターや簡単なメモを残しておくということでは遺言を撤回したことにはなりません。「遺言者は令和7年〇月〇日付で作成した公正証書遺言を全部撤回する」というような内容の遺言書を新たにつくることになります。前の遺言書が公正証書遺言で、撤回する旨を記載する遺言書が自筆証書遺言であっても問題はなく、要は遺言の方式であれば良いわけです。
また、撤回しなくても、新しく遺言書をつくった場合に前の遺言書が新しい遺言書と抵触していれば抵触する部分は撤回したものとみなされます。例えば「一切の財産を長男〇〇に相続させる」旨の遺言書を作成した後に「一切の財産を長女★★に相続させる」旨の遺言書をつくれば、長男に相続させる方の遺言書は撤回したものとみなされます。遺言書が複数あって内容が抵触する場合は、日付の新しいものが有効ということになります。