養子縁組の悪用(相続手続)
高齢者の財産を狙ったと思われる養子縁組について、有効かどうかの争いは過去から結構あります。ここで書く養子縁組とは特別養子縁組ではないです。ちなみに特別養子縁組とは父母による虐待や悪意の遺棄など、養子となる者の監督・保護が著しく困難または不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のために特に必要があると認めるときに家庭裁判所がこれを成立させます。この特別養子縁組は原則として15歳に達している者は養子になることは出来ません。
そうではない養子縁組(普通養子縁組)は、あまり知られていませんが意外と成立するハードルが低く、当事者が署名して役所に届け出るだけで成立します。また届け出は必ずしも2人そろって提出しに行く必要もありません。ですので例えば「92歳男性と70歳男性」といった縁組も成立します。判断能力が衰えた父Aが、実子Bの知らないうちに知人男性Cに言われるままCを養子にした、ということは十分起こり得るわけです。そうなればAが亡くなった時は養子であるCも相続人になりますので、実子Bにしてみればびっくりすることになると思います。
戦前の日本では家父長制のもと「家を継がせる」という考えが色濃くありましたので、家を継がせるという目的で様々な養子縁組がされてきました。要件も緩かったのでその影響が現行の民法にも残っているという指摘は多いです。裁判で争ってそういった養子縁組が無効と判断されることもままあるようですが、やはり高齢の親を持つ方は親の人間関係も少し気にかけておく必要があるかもしれません。
ボクシングの元世界チャンピオンである薬師寺保栄氏は偽造した養子縁組届を提出したなどの罪で逮捕されましたね。 妻との離婚協議がまとまらない中、不倫関係にあった女性を養子にして相続権を与えようとして、養子縁組届の署名欄に薬師寺被告の妻の名前を無断で書いて偽造した、というもののようです(配偶者がいる場合は、養子縁組に関し配偶者の同意が必要)。薬師寺氏は1968年生まれの58歳。新聞記事の情報が正しいとすれば、高齢により判断力が衰えたケースというより まともにいろんなことを判断する能力の欠如が疑われそうな、何ともシュールな事件です。

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